中国産野菜は本当に危ないのか。違反率ランキングと「産地が見えない食卓」の話
8月に中国・河北省で「ホルムアルデヒド溶液に浸した白菜」が出荷されていたことが発覚し、9月には広東省で硫黄でいぶして白くしたたけのこが摘発されました。週刊新潮はこれを受けて、外食チェーンやコンビニの「中国産野菜」使用状況を実名で調べる特集を連載しています。
4人の子どもの弁当と夕飯をつくる身として、正直ドキッとしました。うちの冷凍庫にも、弁当用の冷凍ブロッコリーと冷凍ほうれん草が常に入っているからです。
ただ、不安なときほど数字を見たい。今回は厚生労働省の輸入食品監視統計を国別に並べ直し、「中国産は本当に危ないのか」「そもそも自分はどこで中国産野菜を口にしているのか」を整理してみました。
まず事実:問題の白菜・たけのこは日本に入ってきたのか
ホルムアルデヒド白菜について、厚生労働省は8月28日付で各検疫所に通知を出し、中国政府から「問題の白菜は日本に輸出されていない」との報告を受けたとしています。8月末の報道でも、国内の白菜からホルムアルデヒドが検出されたという報告はないと伝えられました。
硫黄たけのこについても、9月下旬時点で当該品が日本に輸入されたと示す公表情報は確認できません。ただ、中国産のたけのこは水煮パックやラーメンのメンマなど、加工品として日本にも広く流通しています。流通経路の調査は中国側で続いているので、ここは「今のところ確認されていない」が正確な言い方です。
国別「違反率」ランキング:中国は28か国中16位
輸入食品は、港や空港の検疫所に届け出たうえで、必要に応じて検査を受けます。基準を超える残留農薬や使ってはいけない添加物が見つかれば「違反」として、積み戻しや廃棄になります。
厚生労働省が公表している令和7年度(2025年度)の輸入食品監視統計では、全体で約253万件の届出に対し違反は791件、違反率は0.031%でした。この国別表から、届出が年1万件以上ある主要28か国について「違反件数÷届出件数」を計算して並べたのが下の表です。
| 順位 | 国・地域 | 届出件数 | 違反件数 | 違反率 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | インド | 25,129 | 36 | 0.143% |
| 2 | スリランカ | 12,974 | 13 | 0.100% |
| 3 | トルコ | 10,118 | 8 | 0.079% |
| 4 | インドネシア | 38,583 | 25 | 0.065% |
| 5 | ベトナム | 121,117 | 65 | 0.054% |
| 6 | アメリカ | 153,582 | 75 | 0.049% |
| 7 | マレーシア | 25,681 | 12 | 0.047% |
| 8 | 台湾 | 28,306 | 13 | 0.046% |
| 9 | ニュージーランド | 18,429 | 8 | 0.043% |
| 10 | 韓国 | 99,728 | 38 | 0.038% |
| … | … | … | … | … |
| 16 | 中国 | 1,070,871 | 223 | 0.021% |
| … | (参考)全体平均 | 2,532,256 | 791 | 0.031% |
※厚生労働省「令和7年度 輸入食品監視統計」表5(生産・製造国別)より筆者算出。届出1万件以上の国のみ。違反率=違反件数÷届出件数。
届出が少ない国まで含めると、ウズベキスタン(303件中36件、11.9%)やバングラデシュ(0.63%)のように率が跳ね上がる国もあります。ただ件数が小さい国は、数件の違反で率が大きく動くので、上の表では主要国に絞りました。
見えてくるのは3つのことです。
- 違反の「件数」は中国が最多。223件で、全体の約3割を占めます。これは届出件数そのものが全体の4割を超える、ダントツの輸入元だからです。
- 違反の「率」は平均より低い。0.021%で、アメリカや韓国、台湾より低い水準です。
- 検査はむしろ手厚い。中国産の検査件数は約10万件で、検査1件あたりの違反率も0.22%と全体平均(0.37%)を下回っています。
ちなみに中国産の違反を品目別に見ると、野菜関連では「冷凍野菜」が29件(届出約7万2千件中)、ゆり科(ねぎ・にんにく等)・あぶらな科・せり科の生鮮野菜がそれぞれ10件前後でした。ゼロではない。でも「中国産だから一律に危ない」という数字にはなっていません。
輸入が多い中国野菜ランキング
2025年の日本の野菜輸入量は約287万トンで、冷凍野菜は125万トンと過去最高を更新しました。輸入野菜全体のおよそ半分が中国産です。
冷凍部門(中国産・2024年度)
- ほうれんそう … 約5.6万トン
- ポテト … 約5.1万トン
- ブロッコリー … 約4.9万トン
- さといも … 約2.6万トン
- えだまめ … 約2.6万トン
- ミックス野菜 … 約1.9万トン
- いんげん … 約1.4万トン
冷凍野菜の輸入全体に占める中国のシェアは2025年度に53.6%まで上がっています。ブロッコリーはエクアドル産と二分していて、エクアドル産は家庭用、中国産は業務用に多く回っていると言われます。
生鮮部門(中国産が主役の品目)
- たまねぎ … 生鮮野菜で最も輸入量が多い品目。中国産が大半で、皮をむいた「むきたまねぎ」として業務用に入ってくるのが中心
- にんじん … 国産が不作の年は加工・業務用で引き合いが強まる
- ねぎ … 輸入はほぼ全量が中国産。年5〜6万トンで、国内収穫量の1割ほど
- にんにく … スーパーの安価なネット入りの多くが中国産
- ごぼう・しょうが … 国産の作柄が悪い年に輸入が増える
ここで大事なのは、どの品目も「加工・業務用」が中心だということです。国内の野菜需要のうち約6割は加工・業務用。つまり中国産野菜の多くは、私たちがスーパーの青果売場で手に取る前に、すでにどこかで調理されています。
どこで口にしているのか:6つの入口
表示のルールで分けると、中国産野菜との接点は次の6つに整理できます。
| 入口 | 具体例 | 産地は分かる? |
|---|---|---|
| ① スーパーの青果売場 | にんにく、しょうが、ねぎ、たまねぎ | 分かる(原産国表示が義務) |
| ② 冷凍野菜・冷凍食品 | 冷凍ブロッコリー、ほうれん草、冷凍餃子 | 一部分かる(重量1位の原材料のみ義務) |
| ③ 水煮・漬物・乾物 | たけのこ水煮、らっきょう、きくらげ、干ししいたけ | 一部分かる(同上) |
| ④ パック入りの惣菜・カット野菜 | 工場で作られたサラダ、煮物、千切りキャベツ | 一部分かる(同上) |
| ⑤ 店内調理の惣菜・コンビニのカウンター商品 | 揚げ物、店内で詰めた弁当 | ほぼ分からない(表示義務なし) |
| ⑥ 外食 | ファミレス、定食、ラーメン、居酒屋 | ほぼ分からない(表示義務なし) |
加工食品の原料原産地表示は2022年4月から全面義務化されましたが、義務があるのは「重量が一番多い原材料」だけです。冷凍餃子なら、1位が豚肉なら豚肉の産地しか書かれていないことがあります。キャベツやにらの産地までは分かりません。
「A国又はB国」という書き方も認められています。これは時期によってA国産だけ、B国産だけ、両方混ぜる、のどれかという意味です。買う時点で、手元の1パックがどちらなのかは分かりません。
そして外食と、店で調理する中食は、そもそも原料原産地の表示義務の対象外です。国のガイドラインで自主的な情報提供が求められているだけ。今回の週刊新潮の調査で、餃子の王将がたけのこ以外の主要食材は国産、リンガーハットが漬物まで国産と答えた一方、産地の回答を避けたチェーンも少なくなかったのは、この「任意」の構造があるからです。
私の場合:選べるところでは選ぶ
白状すると、私はスーパーで食品を買うとき、けっこう産地を見ています。
たとえば漬物。らっきょうや高菜、ザーサイは中国産が多いジャンルなので、裏返して「国産」かどうかを確認します。にんにくも、ネットに入った安い中国産と国産が並んでいたら、値段差を見て国産を選ぶことが多い。子どもが好きな餃子は、チルドや冷凍のパッケージで野菜の産地を確認します。ただ、ここは先ほどの「重量1位だけ」のルールにぶつかることも多く、キャベツやにらの産地まで書いてある商品はそう多くありません。
一方で、どうしても不安が残るのが惣菜です。仕事帰りに唐揚げやポテトサラダを買って帰ると、それが何の野菜で、どこで作られたのかは分かりません。表示を見て選べる入口では選んでいるのに、完成品になった瞬間に何も分からなくなる。この落差が、中国産野菜のニュースを見たときの落ち着かなさの正体なのだと思います。
考察:怖がるべきは「中国産」より「見えないこと」
統計を並べてみて分かったのは、違反率だけ見れば中国産は特別に危ないわけではない、ということです。アメリカ産や韓国産の方が率は高い。中国産を避けてアメリカ産の冷凍ポテトを選んでも、リスクの話としてはあまり意味がありません。
それでも不安がなくならないのは、ホルムアルデヒド白菜のように「検査項目に入っていなかった不正」が現地で起きうること、そして自分の口に入る経路の大半が表示で見えないことの2つが重なっているからです。検疫は想定された物質を調べる仕組みなので、新しいタイプの不正には後追いになります。これは中国に限らず、どこの国の食品でも同じ構造です。
だから私は、次のくらいの距離感で付き合うことにしています。
- 表示で選べるものは、値段と相談しながら選ぶ。にんにく、漬物、冷凍野菜は国産との価格差が小さい品目から切り替える。
- 見えないものは、全部は避けない。惣菜や外食まで完璧に避けるのは、共働き4児の家では現実的ではありません。頻度で調整します。
- 気になる店は聞く。表示義務はなくても、産地を公開したり、聞けば答えてくれたりする店はあります。答えてくれる店を選ぶこと自体が、消費者側の意思表示になります。
皆さんは、スーパーで産地を見て選んでいるものはありますか。逆に、惣菜や外食の産地はどこまで気にしていますか。