株高で「過去最高2351兆円」、でも我が家の実感はゼロ ― 40代が向き合う”二極化”の正体

2026年9月22日

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「過去最高」の見出しに、なぜか置いていかれる感覚

ニュースで「家計の金融資産が過去最高を更新」という文字を見たのは、朝、まだ子どもたちが起きる前の食卓でした。日銀の資金循環統計で、日本の家計が持つ金融資産の残高は2351兆円と、過去最高を更新したそうです。株高が資産全体を押し上げた、と。

数字だけを見れば景気のいい話です。でも、正直に言うと、私の最初の感想は「へえ」でも「よかった」でもなく、うっすらとした置いていかれる感覚でした。我が家の通帳は、その2351兆円のうちのどこにいるんだろう、と。

同じ時期に、もうひとつの数字も目に入っていました。実質賃金です。名目の給料は上がっているはずなのに、物価の伸びに追いつかず、前年を割り込む月が続いてきた。2025年は結局、実質賃金指数が前年比で4年連続のマイナスでした。2026年に入って一時プラスに転じたものの、秋以降は物価次第で再び下振れするリスクがある、という見立ても出ています。

片方で「資産、過去最高」。片方で「賃金、物価に追いつかない」。この二つが同じ国の、同じ月のニュースとして並んでいる。ここに、私がこの数年ずっと引っかかっている”二極化”の正体があるように思うのです。

「上がっているもの」と「上がらないもの」は、別々に動いている

冷静に考えれば、当たり前の話ではあります。株価が上がって恩恵を受けるのは、株を持っている人。金融資産の残高が過去最高になったといっても、その大半は資産を多く持つ層に偏っている。一方で、暮らしの原資が給料だけの家計にとっては、株高はニュースの中の出来事で、手元では物価高だけが実感として残る。

つまり、”資産を持つ経済”と”賃金で暮らす経済”は、もう別々のリズムで動いているのだと思います。同じ40代でも、この二つのどちらに足を置いているかで、この数年の景色はまるで違って見えたはずです。

私はここで「だから今すぐ投資を」と煽りたいわけではありません。むしろ逆で、株高の見出しに焦って飛び込むのがいちばん危ういと感じています。ただ、ひとつだけはっきりしたことがある。株高の恩恵は、待っていても自動ではやって来ない、ということです。賃金という一本の足だけで立っている限り、資産経済がどれだけ膨らんでも、その膨らみは自分の外側で起きているだけなのです。

私が「二本目の足」を意識し始めた頃のこと

思い返せば、私が投資らしきものに手を出し始めたのは、2社目のネットベンチャーにいた頃でした。当時は日本株の個別銘柄を、半分は勉強、半分はゲーム感覚で買っていた。正直、儲かった記憶よりヒヤッとした記憶のほうが多い。FXにも手を出して、これは早々に「自分の性格には向いていない」と痛感しました。

それでも、あの時期に「給料以外にお金が動く回路」を一本作っておいたことは、いま振り返ると悪くない選択だったと思います。金額の大小ではなく、賃金と資産という二つの足で立っているという感覚。この感覚があるかないかで、こういう二極化のニュースを見たときの心の揺れ方がずいぶん変わる。片足だけだと「置いていかれる」になり、二本あると「もう一方の足で追いかけよう」になる。

4人の子に遺したいのは、お金より「立ち方」

我が家には子どもが4人います。上の子は難関校に合格し、下の子は今まさに中学受験の渦中にいて、なかなか成績が伸びずに親子で悩む日々です。この子たちがいずれ社会に出て給料をもらうようになったとき、日本の実質賃金がどうなっているかは、正直まったく読めません。

ただ、ひとつだけ確からしいことがある。彼らが働き始める頃にも、おそらく”資産を持つ経済”と”賃金で暮らす経済”の二極化は残っている、いやもっと開いているかもしれない、ということです。

だとしたら、親として遺したいのは、まとまったお金そのものよりも、「二本の足で立つ」という立ち方のほうだと思うのです。給料はもちろん大事にする。でも、給料という一本足に全体重を預けきらない。少額でもいいから、資産という二本目の足を早いうちから地面につけておく。その感覚を、食卓の会話や、私自身の背中で少しずつ渡していけたらと考えています。

まず自分がやっている、地味な三つ

偉そうなことを書きましたが、私自身がやっているのは地味なことばかりです。ひとつ、株高のニュースで持ち高を増やしたくなったら、まず三日寝かせる。焦りで買った分は、だいたいろくなことにならないからです。ふたつ、賃金という足の”耐性”も同時に鍛える。物価が上がる前提で、固定費の見直しや、本業での自分の価値を保つことをおろそかにしない。みっつ、資産の増減に一喜一憂しない仕組みにして、値動きを毎日見ない。

資産経済に片足を置くというのは、勝ち負けのゲームに参加することではなく、二極化のどちら側にも振り回されない自分をつくることだと、40代半ばになってようやく思えるようになりました。

あなたの家計は、いま何本足で立っていますか

「過去最高2351兆円」という見出しを、あなたはどんな気持ちで読んだでしょうか。素直に喜べた人、私のように置いていかれる感覚を持った人、そもそも他人事だと思った人。その反応の違いそのものが、いまの日本の二極化を映しているのかもしれません。

大事なのは、どちら側にいるかを嘆くことではなく、次の一歩を「賃金の足」と「資産の足」のどちらからでも踏み出せるようにしておくことだと思います。私はまだ、その二本目の足がフラフラしています。でも、片足で立ち続けるよりはずっとマシだと、今朝のニュースを見ながら改めて思いました。


※本記事は筆者個人の考えを述べたものであり、特定の投資を推奨するものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

参考:
・家計の金融資産2351兆円、過去最高更新(日銀 資金循環統計・関連解説)
・2025年の実質賃金指数は前年比マイナス1.3%で4年連続マイナス(労働政策研究・研修機構 JILPT)
・実質賃金は改善続くも秋以降に下振れリスク(第一生命経済研究所)