離れて暮らす親の「キーパーソン」——同居せずに支えるために、母の介護で学んだこと
介護に関する記事が続けて目に入った。「介護のための同居は”したくない”が親世代の約8割」(朝日新聞・LIFULLの調査)、そして「離れて暮らす40代の子が、高齢の親の”キーパーソン”になるためのヒント」(東洋経済オンライン)。どちらも、私自身が通ってきた道と重なって、思わず読み込んでしまった。
私の母は、闘病の末に見送った。その介護の時期に学んだことを、今日は正直に書いてみたい。実家は関東近郊で、当時も今も父と妹が暮らしている。私が住んでいる都内から実家までは車で1時間半。離れて暮らす側の”もどかしさ”は、痛いほど分かる。
まず痛感したのは「同居している人に任せてはいけない」ということ
介護は、家族・兄弟の全員で方向性をすり合わせるべきものだと、身をもって思った。「同居しているから」というだけで、そこにいる家族に判断も労力も丸投げしてしまうのは、あまりに負担が大きい。我が家では、主に父と妹が母のそばで介護を担ってくれていた。だからこそ、離れている私や弟が「どう関わるか」が問われた。
弟とその家族は転勤で遠方にいて、物理的にはなかなか参加できなかった。それでも「自分にも何かできるかもしれない」と、制度やサービスを色々と調べてくれた。その場にいられなくても、”調べる・考える”で担える役割はある。私は私で、実家の父と妹の負担が大きいと感じてからは、意識して頻繁に帰るようにした。
転機は、”介護のプロデューサー”に相談し始めたこと
それでも、在宅で介護を続ける負担は大きい。転機になったのは、介護のケアマネジャー——いわば”プロデューサーのような存在”に、こちらから相談するようになったことだ。
正直に言うと、その方は最初、決して能動的ではなかった。今思えば、向こうも「家族にどこまでぐいぐい踏み込んでいいか」を測りかねていたのだと思う。でも、こちらから具体的に相談を持ちかけるようにしたら、状況は変わった。訪問介護(自宅に来てケアしてくれるサービス)や、デイサービス(日帰り、時には泊まりもできる施設)を紹介してくれたのだ。
サービスを「きちんと使う」ことが、在宅で支える人を守る
こうした制度やサービスを、遠慮せずにきちんと利用すること。これが、実家で介護する側の負担を確実に減らす。あのとき、もっと早く動けばよかったと今でも思う。
特に、介護される人が病気を抱えていると、そばで支える父や妹は外出すらままならなくなる。ずっと気を張り続ける生活だ。だからこそ、訪問看護や看護師が対応してくれる時間、デイサービスに預けられる半日や1日が効いてくる。介護する側に「気を張らなくていい時間」ができること——これが、在宅介護を長く続けるために本当に大切だと、身にしみて感じた。
離れていても、”キーパーソン”にはなれる
私が母の介護で担えたのは、そばで手を動かすことよりも、むしろ「全体をつなぐ」役割だった。兄弟で方向性を合わせる、ケアマネに相談してサービスにつなぐ、負担が偏っていないか気を配る、そして帰れるときは帰る。離れて暮らす子だからこそ、少し引いた視点でキーパーソンになれる部分がある。
母を見送った今、実家には父と妹が残っている。次は父のことを、同じ轍を踏まないように考えている。同居していないことは、支えられない理由にはならない。あなたのご家庭では、介護の”方向性”を、家族みんなで話せていますか。
参考: 「介護のための同居、”したくない”が親世代の約8割」(朝日新聞/LIFULL調査)、「離れて暮らす40代の子が高齢の親のキーパーソンになるヒント」(東洋経済オンライン)、「一人で抱える前に知っておきたいショートステイの使い方」(社会福祉士監修)ほか、2026年8月。