【中国野菜シリーズ②】長女の好きなメンマ、その竹はどこから? 中国“硫黄タケノコ”報道と、産地が見えない一皿

うちの長女は、メンマが大好きです。ラーメンを食べるときも、まずメンマから箸をつけるくらいに。

そのメンマの原料、タケノコについて、気になるニュースが出ました。中国で、硫黄で燻したタケノコが出回っていた可能性があるという報道です。

前回の記事(中国産野菜シリーズ第1弾)では、国別の違反率を計算して「怖がるべきは中国産そのものより、産地が“見えないこと”」と書きました。今回はその続きです。しかもタケノコは、にんにくやらっきょうと違って「国産を選ぶ」こと自体がほぼできない食材でした。

何が起きたのか:基準の約24倍の二酸化硫黄

集英社オンラインの報道(2026年10月、livedoor NEWS配信)を整理すると、事実関係は次のとおりです。

  • 場所は中国南部・広東省清遠市の山間部。生のタケノコを運ぶトラックを動画配信者のチームが追跡し、硫黄で燻す加工現場を撮影した
  • 清遠市当局は9月18日、映像の内容を確認したと公表し、原材料・製品の差し押さえと関係者への法的措置を表明
  • 中国メディアの報道では、タケノコから1kgあたり4,860mgの二酸化硫黄を検出。中国が定める乾燥タケノコの許容量(200mg)の約24倍
  • 告発したのは、8月に河北省のホルムアルデヒド白菜を撮影した人物と同じ配信者
  • 日本に輸入されたことは確認されていない。厚生労働省は今回の件について立場を表明していない
  • 中国産タケノコを扱う日本の輸入会社の中には、9月下旬に自社の輸入元・工程を再調査し、問題がないことを確認したと告知したところもある

硫黄で燻すのは、タケノコを白く保ち、日持ちさせるためだそうです。見た目のいい商品にするための違法な近道です。

個人的にいちばん引っかかったのは、数字よりも構図でした。8月の白菜も今回のタケノコも、見つけたのは行政の検査ではなく、一人の動画配信者だったという点です。

4,860mg/kgは、どのくらいの量なのか

ここは煽らずに、日本の物差しで測ってみます。

日本では二酸化硫黄(亜硫酸塩)は漂白剤・保存料として使える添加物ですが、食品ごとに上限があります。かんぴょうや乾燥果実のように個別の基準がない一般的な食品(「その他の食品」)は、0.030g/kg(30mg/kg)未満です。

今回の4,860mg/kgを単純に並べると、約160倍。乾燥品と水煮では条件が違うので厳密な比較ではありませんが、桁が違うことは分かります。

一方で、日本の水際がこの物質を見ていないわけではありません。厚労省の輸入食品違反事例をさかのぼると、中国産の乾燥かんぴょう(5.5g/kg)や乾燥くこの実(5.8g/kg)、練炭で乾燥させた乾燥きくらげなど、二酸化硫黄での積み戻し・廃棄の記録が並んでいます。今年7月にも、千葉市がベトナム産のなすの浅漬け(0.10g/kg)に回収・廃棄を命じています。

千葉市の発表には、二酸化硫黄の一日摂取許容量(体重1kgあたり0.71mg)をもとに、この違反品でも「体重50kgの人が毎日約355g食べ続けても健康への影響はない」という説明が添えられていました。基準値は、それだけ余裕を持って設定されています。

つまり、日本の基準は厳しく、検査でも実際に引っかかっている。ただし、検査は届け出られたすべての貨物を調べる全量検査ではありません。「見張りはいる。でも全部は見ていない」が正確なところだと思います。

「9割輸入」の中身:メンマの国産はわずか1%

林野庁の需給表によると、2024年(令和6年)のタケノコは国内生産20,865トンに対し、輸入が127,708トン(生換算)。消費量の86.0%が輸入です。2020年からずっと84〜89%台で推移しています。報道でも、日本で消費されるタケノコの約9割が輸入で、その大半が中国産と伝えられています。

メンマになると、さらに極端です。国内に流通するメンマの99%が台湾・中国産で、国産は1%程度と言われています。国内シェア約3割のメンマメーカーも、市場の大半は中国産で、残りも台湾・ベトナムなどの輸入品だと説明しています。

理由のひとつは竹の種類です。本場のメンマは台湾や中国・四川省の「麻竹(まちく)」を茹でて1か月ほど発酵させ、干して作ります。日本で一般的な孟宗竹は同じようにしても発酵しないため、国産で作ると「メンマ風」になるのだそうです。

我が家のメンマは、3つのルートでやってくる

考えてみると、うちの食卓に上がるメンマは3ルートありました。

① 4月の自家製:産地は「実家近くの竹林」

今年の4月、実家の近くで採ったタケノコを、長女のためにメンマにしました。アク抜きして、ごま油で炒めて、醤油と鶏ガラで煮詰める。正直、お店のメンマとは食感が違います。孟宗竹なので、まさに「メンマ風」です。

それでも長女は喜んで食べました。産地を気にする必要がゼロの一皿は、この1年でこれだけです。ただ、旬は春の数週間。年に一度のイベントであって、日常の解決策にはなりません。

② 桃屋の瓶:裏を見れば分かる

ふだんは結局、買います。よく買うのは桃屋の瓶詰めで、手に取ったら産地は見るようにしています。

桃屋は「味付メンマ」の原料について、台湾の標高400m以上の“深山”と呼ばれる地域のタケノコを使っていると公式サイトで説明しています。日が当たりすぎず繊維が柔らかい、という理由まで書いてある。ここまで書いてあると、選ぶ側としては安心材料になります。

ただし注意点もあります。原料原産地表示は、いちばん重い原材料がすでに加工品(たとえば「メンマ」)の場合、その製造地を書けばよいルールです。「◯◯製造」とあっても、それが竹の育った場所とは限りません。瓶の裏は、メーカーの説明とセットで読むのがいいと思っています。

③ 肉屋の自家製惣菜:調べる手段がない

悩ましいのが3つ目です。近所の肉屋さんの惣菜コーナーに、自家製のメンマがあります。これがおいしい。長女もお気に入りです。

でも、どこの竹なのかは分かりません。そして、これは表示漏れではないんです。食品表示のルールでは、製造・加工したその場所で販売する食品は、原料原産地の表示が不要。店内で作って量り売りする惣菜は、そもそも表示の対象外なのです。

自家製とはいえ、原料のタケノコ水煮は業務用を仕入れているはずで、統計から考えれば輸入品である可能性は高いでしょう。それ自体がダメだとは思いません。問題は、私に確かめる手段がないことです。

表示で「見える」メンマ、「見えない」メンマ

第1弾で整理した「6つの入口」を、メンマに当てはめるとこうなります。

どこで買う/食べるか産地の情報
瓶詰め・袋のメンマ、タケノコ水煮表示義務あり(ただし加工品原料は製造地表示)
スーパーのパック惣菜(工場製造)重量1位の原材料のみ表示。メンマが脇役なら出てこない
店内で作る惣菜(肉屋・スーパーのバックヤード)表示義務なし
ラーメン店・コンビニのカウンター表示義務なし(任意のガイドラインのみ)

家族の口に入るメンマのうち、産地が見えるのは「自分で瓶を買ったとき」だけ。ラーメン屋のメンマも、肉屋のメンマも、見えません。

それでも、私がやることは3つだけ

だからといって、メンマ断ちをするつもりはありません。長女からメンマを取り上げる理由としては、今回の報道は弱すぎます。日本への輸入は確認されていないし、日本の基準と検査の網もある。そのうえで、できることを3つに絞りました。

  1. 家で買うものは、裏を見る。瓶・袋のメンマとタケノコ水煮は、原料原産地とメーカーの説明を確認して選ぶ。「どこ産か書いてあるメーカー」を選ぶのは、消費者ができる小さな投票です。
  2. 肉屋さんには、聞いてみる。表示義務はなくても、店の人は仕入れ先を知っています。「このメンマ、どこのタケノコですか?」は失礼な質問ではないはずです。答えが中国産でも、それで買うのをやめるかどうかは、そのあとで決めればいい。
  3. 国産メンマという選択肢を知っておく。放置竹林の幼竹をメンマにする「純国産メンマプロジェクト」は全国40都府県に広がり、福岡・糸島の竹を使った業務用の国産穂先メンマも、この9月にメーカーとラーメン店の共同開発で発売されました。毎日は無理でも、「選べる1%」があることは覚えておきたい。

まとめ:見張りが一人の配信者、という不安

今回の報道で私がいちばん不安に感じたのは、タケノコの数値よりも、中国当局の発表に「メディアとネットユーザーの監視に感謝」と書き添えられていたことでした。食の安全を最初に見つけたのが行政ではなく配信者だった、と当局自身が認めているようなものです。

だから日本側では、輸入者の管理と水際の検査、そして私たち消費者の「裏を見る」習慣が、それぞれ一枚ずつの網になる。どれか一枚で完璧に防げるわけではないけれど、重ねれば目は細かくなります。

来年の4月も、実家近くの竹林でタケノコを採って、長女のためにメンマを作るつもりです。産地を気にしなくていいメンマを、年に一度くらいは。

みなさんの家の冷蔵庫のメンマ、瓶の裏を見たことはありますか?

参考