「管理組合の味方」が裏で組んでいた。マンション修繕談合171件のニュースで、実家の屋根で払った400万円を思い出した

9月28日、公正取引委員会が、関東地方のマンション大規模修繕工事をめぐる談合で、設計コンサルタントと施工会社の計42社の独占禁止法違反を認定し、うち38社に排除措置命令を出しました。施工会社37社への課徴金は計約16億4,000万円。談合があった工事は171件にのぼります。

マンションの大規模修繕で公取委が行政処分を出すのは、これが初めてだそうです。さらに異例なのは、談合があった工事を発注したマンションの一覧まで公表したこと。今後、管理組合が業者側に損害賠償を求める動きも出てきそうです。

このニュースを読んで、私が真っ先に思い出したのは、マンションのことではありませんでした。茨城の実家の屋根の修繕で、400万円をそのまま支払った自分のことです。

「住民の目」が、業者側の目になっていた

今回の談合は「設計監理方式」と呼ばれる発注のしかたで起きていました。

管理組合は、修繕工事の専門知識を持っていません。だから設計コンサルタントを雇い、建物を調べてもらい、工事の内容を決めてもらい、業者選びを手伝ってもらう。コンサルは本来、住民の側に立って業者をチェックする「住民の目」の役割です。

ところが報道によると、遅くとも2021年秋ごろから、その「目」が逆向きに働いていました。コンサルが管理組合の予算を業者側に伝え、工事ごとに受注する会社をあらかじめ決め、施工会社同士は見積もり額を事前にすり合わせていた。そして予定どおり受注できたら、工事代金の5%がコンサル側に支払われていたといいます。

国土交通省の2021年の調査では、1回目の大規模修繕の平均額は約1億5,000万円。単純計算すると、その5%は750万円です。住民が「自分たちの味方」として報酬を払っていた相手が、裏で工事代金からもお金を受け取っていた。構図としては、かなり根が深いと感じます。

タワマンを売った私は「逃げ切った」のか

私は33歳のとき、都内のタワーマンションを買いました。その後売却して、38歳で近所の新築戸建てに移っています。

管理組合の役員は輪番制で、順番が回ってくる前に売却したので、私は役員の経験がありません。大規模修繕も、売却したあとに実施されました。つまり私は、マンションの修繕というイベントに一度も当事者として立ち会っていないのです。

ニュースを読みながら、正直に言えば「関わらずに済んだ」という気持ちが少しだけありました。でも、すぐに考え直しました。もし順番が回ってきて、コンサルから分厚い提案資料と3社分の見積もりを渡されていたら。私はそれを疑えたでしょうか。

たぶん、無理だったと思います。「専門家が比較して選んでくれたのだから」と、そのまま総会に通していたはずです。3社の見積もりが最初からすり合わされていたら、比べる意味そのものがないのに。

実家の屋根で突きつけられた「400万円」

そう思えるのは、似た経験がすでにあるからです。

母が亡くなってから、茨城の実家のことは父に代わって私が手配することが増えました。あるとき実家の屋根の件で、以前その屋根の工事を施工した大手ハウスメーカー系のグループ会社に相談しました。「前にやってもらった会社なら、家のことも分かっているし安心だろう」と考えたからです。

請求された金額は、400万円でした。そして私は、それを支払いました。

高い、と感じました。でも本当の問題は、金額そのものではありません。それが高いのか妥当なのかを判断する材料が、私の手元に何ひとつなかったことです。屋根の面積も、どんな工法が必要なのかも、相場も知らない。ほかの会社に見積もりを取ることもしなかった。判断の根拠は「前にやってくれた会社だから」だけでした。

支払いを終えてから、「ああ、自分は完全に情報弱者だったな」と思いました。そして、次は情報弱者にならないようにしないといけない、と強く感じました。今回の談合のニュースは、その感覚をもう一度はっきり思い出させてくれました。

問題は「業者の悪意」より「チェック役の外注」

談合をした会社が悪いのは、もちろんです。ただ、この事件から個人として学ぶべきことは、もう少し別のところにあると私は考えています。

それは、チェック役を外注した瞬間に、そのチェック役自体が利害関係者になりうるということです。

専門家に任せること自体は悪くありません。自分で全部調べるのは現実的ではないし、4人の子どもがいて仕事もしている身としては、任せられるところは任せたい。問題は、任せたあとに「この人は誰からお金をもらっているのか」を一度も確かめなかったことです。

考えてみると、この構造は住宅の修繕に限りません。住宅ローンの相談窓口、保険の相談、投資の助言、仕事で使うコンサルやベンダーの選定。「中立な立場で比べてくれる人」の報酬が、実は比べられる側から出ているケースは、身の回りにいくらでもあります。それが即悪いわけではありません。ただ、知っているかどうかで、話の聞き方がまるで変わります。

情報弱者にならないために、私が決めた3つのこと

実家の屋根の一件とこのニュースを経て、今後の修繕や大きな買い物で、次の3つを自分のルールにしようと決めました。

① 見積もりは最低3社。うち1社は「紹介でも前回の業者でもない」会社にする

前回の施工会社や、誰かの紹介だけで決めると、比べる軸が生まれません。まったく利害のない会社を1社混ぜるだけで、金額の幅と工事内容の違いが見えるようになります。

② 専門家には、報酬の出どころを聞く

コンサルや相談窓口には「業者から紹介料や手数料を受け取っていますか」と、失礼を承知で聞く。マンションなら、コンサル契約に「施工会社からの金銭の受け取りを禁止する」内容を入れられないか、管理組合で確認する価値があると思います。

③ 自分で判断できる材料を、少しでも手元に持つ

図面、前回の工事の記録、傷んでいる箇所の写真。屋根は自分では上がれないので、点検をしてもらうなら必ず写真をもらう。すべてを理解できなくても、「何が根拠でこの金額なのか」を質問できるだけで、相手の対応は変わります。

また、今回公取委は談合があったマンションの一覧を公表しています。関東のマンションにお住まいの方は、自分の管理組合の工事が含まれていないか、一度確認してみてもいいかもしれません。

人を信じることと、確かめることは矛盾しない

私はどちらかというと、人を信じたいタイプです。相手の良いところを見つけるのは得意だし、「この人に任せよう」と決めたら気持ちよく任せたい。

でも、信じることと確かめることは、たぶん矛盾しません。むしろ、ちゃんと確かめたうえで任せたほうが、相手ともいい関係でいられる。実家の屋根の400万円を、比べもせずにそのまま支払ったとき、私は相手を信じていたのではなく、判断を放棄していただけでした。

その400万円が高かったのか妥当だったのか、比べる材料を持たなかった私には答えようがありません。だからこそ、次は答えられる自分でいたいと思っています。

戸建てに住む私にも、十数年後には外壁や屋根の修繕がやってきます。そのとき、同じ思いはしたくありません。

あなたの家の次の修繕、業者を選ぶのは誰ですか。そして、その人は誰からお金をもらっていますか。


参考:マンション修繕、関東の工事171件で談合 38社に排除命令(毎日新聞/Yahoo!ニュース)/公正取引委員会 2026年9月28日発表